あたしのおうちにいらっしゃい(まどか)

恐がった様子なんてひとつも無かった。
なぜなんだろう、今になってからそう思う。運命なんてものをあの子は感じていたのかも知れない。おれのように。運命なんて、そんなものを。安いかもしれない、そんなものを。
その子の名を呼ぶのはきっと償いたいとでも思っているからなんだろうか。それともあの子の変わった名を呼ぶのは、なにかの一体、愛なのか。

まどかは、ふ、と視線をあげる。いつのまにか眠っていたらしく額らに汗が滲み、じめじめと蒸し暑かった。気だるいようなこの雰囲気がたまらなく鬱陶しくてもう一度寝ようと、ソファーに身を委ねる。あの子は今日、来るのだろうか。そう、思ったが声に出す気にもならなかった。来るのだろうか、そう思う。
(来たらどないしょう)
どうするもなにも、あの子が来たならば、いつものように向かい入れ、嗚呼愛しい妹よ、なんて事を思うんだろう。そういう事を毎日考えているわけではなかったが、時折感じる。ああ、なんていとおしい。そう、感じるのだ。

「ああやって迎えに行った時、おれは確かに震えていた。これから起こるきみへの全てに おれは震えていたよ。」

そう教えればあの子供はどんな顔をするだろう?
きっと笑って、そうなんか、と恥かしそうに呟くだけだ。

まどかは眠たそうに起き上がり、ノラの家に電話をかける。あれを抱きしめることに覚悟なんぞいらないのだ。