新編・我輩は犬である(受付と拷問科)

士己道あすかは大体ここにいる。それは赤毛の子も一緒であり、まあある意味当然のことだろう。

牧江ひろはふらっとやって来て、受付前にあるソファーに座った。にんまりしている。奥のほうで赤毛が揺れたのを確認して、にんまりした。その表情は角度から見ると如何にも狐的で、あすかは何となくお祭を連想させた。見たことがある、とあすかは思う。彼女を見たのは数度目であり、片手で数えられる程度だ。見たことがある、と思った。クリップボードのクリップをいじりながら思い返して、ああ、そうか、と納得。赤毛の子の知り合いだな。納得。そして、ああ、そうだ。拷問科だ…。何ですぐに思い出せなかったんだろう、とあすかは少し、驚愕と共に落胆した。早く赤毛の子が隣の椅子に戻ってこないかなと考える。ひろ的にはあの金髪で七三の子供――あすかがいることは大抵どうでも良かった。早く赤毛の子が目の前の椅子に座らないかなと考える。

抹年叶が向こうの方からふらふらとやって来たのを見て、あすかに言わなきゃと赤毛は何となしに思った。好き合っているのだ、と思う。何となくにやにや。良い事だ、と思ってしまって、嬉しくなった。幸せなのは良い。良い。とても良い。だから私も恋がしたい。ついでのように思って、書類を片手に定位置に着席、しようと行ってみれば拷問科。くらっと眩暈しそうな気がした。否、少し可笑しくて嬉しいのだが。椅子に座ると丁度目の前にくることに気づいて、やるなあと思った。当たり前か。こんにちは、とは言わなかったが、半笑いで曖昧にお辞儀した。にんまりされる。にんまりされてる。会話もないで何が楽しいんだろ、と思ったのはあすかだった。


叶は何にも見てなかったけど、あすかを見る気だ。
ひろは赤毛の子を見てる。
あすかは叶を見ないようにした。
赤毛は結構なんにも考えてなかったが、自分の飼っている鷹のことを思い出していた。