お願いそれだけ言わせないでよ(世良)

この世について、世良は酷く考え込むことがある。それと同時に、気味悪がる事もある。それは、己の思考やこの眼界すべてに。

姉の姿を思い返し、ゆっくりと眼を瞑った。眠りに落ちないほうがよっぽど良い。この世界を暗闇に変え、自身の世界に閉じこもってしまえば、きっともう起きることが出来ない気がする。
世良はあまり目蓋を落とさない。それは、おそれているからだ、と行方は思う。

たかが女、と思った。たかが、たかが、男、だ。
彼女のそばかすや、少し小さな黒目、決して柔らかでない髪、頑丈そうな膝小僧。
思い返す。
彼女が誰を愛していたのかは知っている。けれどしかし、それを脳の奥まで呑み込むということが出来ない。自分の唇の裏を、その粘着な肉で舐めたあと、自分の知らない人間の歯茎を味わっていたのかと思うと、(狂う)

世良は、思う。
彼女の、姉の、あの女の、なにもかもが狂おしい。
煩く、憎らしい。
その息の根、閉じ込めてしまったのは自分なのに、
未だ彼女の心臓を思い返す。
ころしたほうがよっぽどしあわせだ