ははは、例えば…

男は言った。頭がイカレそうな声だと、自分は思う。酷く酔った気分になった。彼の音は子どもを殺す。
私が君を愛したとして
…ずるいジョークだ、と思う。この場合、わたしにしてみれば「例えばの話」でもなんでもなかった。それを君は知っているくせに。めまいがする。
だからと言って、きっと何もないぜ
…意味が、わからないな、と思った。なんで?と思わず反射的に口がうごく。そして彼も間髪いれずにその唇を動かした。まるで、何事も無いようなうごきで。
私は愛をしない
…あいを?
しない
愛を、愛を、しない、と、彼はわたしに向けて云った。宣戦布告だろうとわたしは思った。彼はそう言ってわたしを見る。しかしそれは悠然と。

「君を“愛する”ことなんて簡単なんだ」
(じゃあその「きっと」に私は賭けるとするよ。そういえば、あんたはその眼で睨むのかな。)