子守唄が得意なんだ、というような顔をする。 歌ってやったら下に敷いてた男が嫌そうに暴れだしたので、こらこら、と持っていた煙草で鼻の頭を焼いてやった。小うるさい叫びが耳に痛いので、まどか、まどか、と自分とそっくりな弟を呼びつける。どないしたん、と犬みたいに寄ってくる。ガムテープあらへんか、ときょろきょろしながら訊ねれば、ああ確か陽ちゃんが――あかんわ今あいつおらんかった、とマドカはすこし肩をすくめて兄に教えてやった。 そうかあ、と思い、しゃーないねえとエンは面倒くさそうに立ち上がり、敷いていた男の面を思いっきし殴る。本当にボカッという漫画のような音。ぐたん、と意識が飛んだような顔をしている。あれま、と思いエンはその男を放してやった。ずしゃりという砂の音。同じような音をぞうりで立てながらエンはマドカを振り返り、ほな帰ろか、とお決まりの中折れ帽子を頭に乗せた。 |