はい、と契約の手をとると、ぶっきらぼうにおうとつのある黒い塊をひとつ、のせた。掌に溶ける感覚がして、別にあついわけでもないのに、と契約は思った。何、と言う。ことりは白い髪をゆらして、首を傾ける。バレンタインー。言い方がかわいかったので契約はすこし目を細めてしまった。びくりとまた、ことりの髪がゆれる。あ、え、と変な声を出し、微かに後退り。いらんかった…?と遠慮がちに訊ねてくる様子に、ああ、と思った。誰が、と言う。なにが、とことりが返す。誰がつくった。手の、平にのせられた、それ、に、契約は目をやった。うち。ことりの答えを聞くと同時に、視線が再び彼女を追う。目を捉えた。彼女はそれに震えない。びくともしない。見据えるように、見返した。それは、自然の行為だ。契約こそが目を逸らしたくなる。が、しなかった。代わりに、作れたの、と言った。うん、言いながらことりは恐る恐る契約の隣りに座り、先程契約がしていたように、自分もその黒いものを見た。食べていいの、これは、食べれるの?。その言葉にことりは目を丸くする。反射的に隣りの彼を見て、食べれるよ!と急いで言った。いつの間にか彼はことりをじっと見ていて、笑う。そう、と言って、笑う。その瞬間にことりは、何だか後悔してしまった。作ったことも、それを彼にあげたことも、今、怒ったように言葉を吐いたことも。意地が悪い。呟くような声で、ことりが言うので、契約は「ひひ、」と笑う。それこそ意地悪い笑い方だ。そしてそのまま、ポン、と口に入れてしまった。じんわりと広がる、その甘い感覚に、身が凍る。ずず、と鼻をすすった。どう、どう、とことりが迫る。うん、と契約は口を動かしながら相槌を打った。まずい?とことりが訊くものだから、そのまま押し倒してしまった。ことりの唇に、歯に、舌に、口内に、甘さが痺れた。少し泣きたくなるような味だな、とことりは思う。一旦放したかと思うと、まだ唇の先と先を合わせたままで、契約は笑う。 「まずくない」 ことりは、くそ、と起き上がって彼を押し倒した。愛していると言わせてやる。契約はまた笑ってしまった。 |